猫におけるアセトアミノフェン中毒
Acetaminophen toxicosis
別称: Paracetamol Toxicity, Acetaminophen Toxicosis, Paracetamol Toxicosis
Acetaminophen toxicosis
別称: Paracetamol Toxicity, Acetaminophen Toxicosis, Paracetamol Toxicosis
ポイント
アセトアミノフェン(パラセタモール)は、猫に対して極めて毒性が高く、微量の摂取でも致命的となります。猫は、この一般的な解熱鎮痛薬を代謝・無毒化するために必要な肝酵素を欠いているため、摂取すると赤血球や肝臓に急速かつ致死的な損傷が引き起こされます。救命には、直ちに獣医師による緊急治療を開始することが不可欠です。

要約: アセトアミノフェン(パラセタモール)は猫に対して極めて毒性が高く、赤血球や肝臓に急速かつ致死的な損傷を引き起こします。摂取が疑われる場合は、直ちに緊急獣医療を受診する必要があります。

猫におけるアセトアミノフェン中毒は、直ちに獣医療介入を必要とする致死的な緊急事態です。
アセトアミノフェン(一般にパラセタモール、あるいはタイレノールなどの商品名で知られる)は、人医療において鎮痛・解熱目的で広く使用されている薬物です。家庭の常備薬として最も一般的な市販薬の一つですが、小動物にとっては極めて危険な物質です。なかでも猫は、その毒性作用に対して極めて高い感受性を持っています。錠剤の破片のような微量の摂取であっても、重篤で命に関わる中毒症状を引き起こします。
猫においてアセトアミノフェンがこれほどまでに有害である理由を理解するには、細胞レベルでの機序を見る必要があります。赤血球は、ヘモグロビンと呼ばれるタンパク質を利用して、肺から全身の組織へと酸素を運搬する役割を担っています。ヘモグロビンは「還元型」の状態(二価鉄、Fe2+)の鉄分子を含んでいます。健康な猫では、日常的にヘモグロビンの一部が自然に酸化されてメトヘモグロビン(三価鉄、Fe3+を含み、酸素結合能を持たない)に変化しますが、メトヘモグロビン還元酵素の働きによって、速やかに通常の機能的なヘモグロビンへと還元されます。
しかし、猫がアセトアミノフェンを摂取すると、その代謝産物(特にNAPQIやPAP)が大量に生成され、圧倒的な酸化ストレスを引き起こします。このストレスにより、赤血球中のヘモグロビンの大部分が急速にメトヘモグロビンへと酸化されます。猫は他種に比べてメトヘモグロビン還元酵素の活性が先天的に低いため、この酸化ダメージを修復することができません。その結果、血中メトヘモグロビン濃度が劇的に上昇し、血液は鮮赤色から暗いチョコレート褐色へと変色します。これは機能的な貧血(赤血球の数は十分にあるものの、酸素を運搬する能力が完全に失われた状態)を引き起こし、急速な組織低酸素症および代謝性アシドーシスを招きます。
さらに、酸化ストレスはヘモグロビンを凝集させ、赤血球膜上にハインツ小体と呼ばれる構造物を形成します。脾臓はこれらの破損した赤血球を異常と認識して急速に破壊するため(溶血)、重度の溶血性貧血が引き起こされます。
獣医内科学の主要な文献には以下のように記載されています。
「アセトアミノフェンは猫に対して特に毒性が高い。猫では、硫酸抱合およびグルクロン酸抱合という通常の肝臓での解毒経路が著しく制限されているためである。アセトアミノフェンは酸化されて毒性代謝産物となり、摂取後数時間以内にメトヘモグロビン尿症を引き起こし、2〜7日以内にはハインツ小体性貧血、溶血、および肝不全を誘発する。」
猫におけるアセトアミノフェン中毒の唯一の原因は、同薬物の摂取です。猫は入念にグルーミングを行う習性があるため、被毛にこぼれた液状の薬剤を舐め取ったり、床に落ちた錠剤を誤飲したりすることがあります。しかし、多くの症例は、悪気のない飼い主が体調不良や痛みを抱える愛猫を自宅で治療しようとして、その極めて高い危険性を知らずに人間の薬を与えてしまうことで発生しています。
アセトアミノフェン中毒において、特定の猫種における遺伝的素因はありません。品種、年齢、健康状態に関わらず、すべての猫はこの薬物を安全に代謝するために必要な肝酵素(特にグルクロン酸転移酵素)を欠いています。
さらに、猫は他種と比較して、生理学的に赤血球の酸化障害を受けやすい傾向があります。メトヘモグロビンを機能的なヘモグロビンに還元する酵素であるメトヘモグロビン還元酵素の活性が、生まれつき低いのです。獣医救急集中治療の教科書には以下のように説明されています。
「犬や猫は他種に比べてメトヘモグロビン還元酵素のレベルが低いため、アセトアミノフェンに関連する赤血球の酸化毒性のリスクがさらに高まる。メトヘモグロビン血症は、赤血球中のメトヘモグロビン還元酵素および必要な還元等価物(NADHやGSHなど)が枯渇した時点で顕在化する。」
猫のアセトアミノフェン中毒の臨床症状は急速に進行し、多くは摂取後1〜4時間以内に現れます。主な病態は血液の酸素運搬能力の喪失であるため、症状は劇的であり、直ちに緊急治療を行う必要があります。
主要な徴候(最も診断的価値が高い症状)
一般的な症状
時に見られる症状

濁った褐色または青灰色の歯肉は、アセトアミノフェン中毒によって引き起こされるメトヘモグロビン血症の典型的な徴候です。
猫がアセトアミノフェンを摂取した疑いがある、あるいは摂取したことが確実な場合は、症状が現れるのを待たずに受診してください。診断は主に、摂取歴(曝露歴)の確認と、特徴的な臨床症状(特にチョコレート色の歯肉や褐色の血液)の存在に基づいて行われます。
獣医師は迅速な身体検査を実施し、中毒の確認と損傷の程度を評価するためにいくつかの検査を行います。

血液塗抹検査により、獣医師はハインツ小体を検出し、赤血球の損傷度を評価することができます。
アセトアミノフェン中毒は、極めて緊急性の高い病態です。不可逆的な損傷を防ぐため、治療は積極的かつ多角的に、そして可能な限り迅速に開始しなければなりません。
アセトアミノフェン中毒を起こした猫の予後は警戒を要し(慎重)、摂取量や治療開始までの経過時間に大きく左右されます。
臨床症状が現れる前に除毒処置(活性炭の投与など)や解毒剤(アセチルシステイン)の投与が開始された場合、予後は一般に良好です。しかし、メトヘモグロビン血症、顔面浮腫、重度の貧血などの臨床症状がすでに現れている場合、予後は極めて慎重になります。集中的な獣医療管理のもとで最初の48時間を乗り切った猫は回復の可能性が高まりますが、その後も数日間は肝不全の発症がないか注意深くモニタリングする必要があります。
アセトアミノフェン中毒は、完全に予防可能な疾患です。猫はこの薬物に対して極めて敏感であるため、安全な投与量は存在しません。
猫がアセトアミノフェンを摂取した疑いがある、あるいは摂取したことが分かっている場合は、直ちに緊急獣医療を受診してください。 これは緊急度レベル5(最優先の緊急事態)です。摂取後数時間以内に体内での損傷が始まるため、症状が現れるのを待ってはいけません。
以下の危険信号(レッドフラッグ)が一つでも見られる場合は、直ちに夜間・救急動物病院を受診してください。
治療はペットの状態に応じて獣医師が処方する必要があります。特定の薬物用量は意図的にここに記載していません。
アセトアミノフェン(パラセタモール)は、猫に対して極めて毒性が高く、微量の摂取でも致命的となります。猫は、この一般的な解熱鎮痛薬を代謝・無毒化するために必要な肝酵素を欠いているため、摂取すると赤血球や肝臓に急速かつ致死的な損傷が引き起こされます。救命には、直ちに獣医師による緊急治療を開始することが不可欠です。
メトヘモグロビン血症 / 歯茎が紫になる / 舌が青紫になる / 血が茶色い / チアノーゼ、食欲不振 / ご飯を食べない / 食欲がない / エサを食べない、チアノーゼ / 舌が青紫になる / 唇が紫になる / 歯茎が青白い / 酸欠で青い、顔面および肢端の腫脹 / 顔と足が腫れる / 顔が腫れる / 足がむくむ / 顔がパンパン、ハインツ小体性貧血 / タマネギ中毒貧血 / 玉ねぎ貧血 / 溶血性貧血、低体温症 / 体温が低い / 体が冷たい / 体が冷えている、元気消失 / 元気がない / ぐったりしている / 一日中寝ている / 動きたがらない、嘔吐 / 吐く / ゲロ吐く / 吐き戻し
Bilirubin measurement、Blood smear、Hematocrit、Liver enzyme panel、Methemoglobin level measurement
治療はペットの状態に応じて獣医師が処方する必要があります。特定の薬物用量は意図的にここに記載していません。
この記事は一般的な健康教育を目的としており、専門的な獣医学的アドバイスの代わりにはなりません。ペットが調子悪い場合は、獣医師にご相談ください。