シュウ酸カルシウム尿石症
別称: CaOx Urolithiasis, Calcium Oxalate Uroliths, Calcium Oxalate Urinary Stones
ポイント
シュウ酸カルシウム尿石症は、犬や猫の尿路に痛み伴う鉱物結石が形成される一般的な代謝性疾患です。他の結石とは異なり、食事療法や内科治療で溶解させることができないため、外科的除去が必要となることが多く、生涯にわたる再発予防管理が不可欠です。

要約: シュウ酸カルシウム尿石は、犬や猫に多く見られる痛みを伴う鉱物沈着物です。内科的に溶解することができないため、多くの場合、外科的除去や再発を防ぐための生涯にわたる管理が必要となります。
犬と猫のどちらもシュウ酸カルシウム結石を発症する可能性があり、それぞれに合わせた獣医療管理が必要です。
病態について
シュウ酸カルシウム尿石症は、犬と猫の両方の尿路に影響を及ぼす一般的な代謝性疾患です。尿中の微細な鉱物が凝集し、結石と呼ばれる硬い石のような沈着物を形成することで発生します。これらの結石は、下部尿路(膀胱および尿道)や上部尿路(腎臓および尿管:腎臓と膀胱を繋ぐ管)を含む尿路のあらゆる場所に発生する可能性があります。
結石の種類を特定することは極めて重要です。なぜなら、結石の種類によって対処法が異なるためです。例えば、ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石は、専用の療法食を用いて溶解させることができる場合が多いですが、シュウ酸カルシウム結石は内科的に溶解させることができません。一度形成されると、物理的に除去されるか、あるいは十分に小さければ尿とともに排出されない限り、尿路内に留まり続けます。
これらの結石を治療せずに放置すると、慢性的な痛み、重度の炎症、および生命を脅かす尿路閉塞を引き起こす可能性があります。猫において、上部尿路に結石が形成された場合は特に厄介です。主要な獣医外科学の教科書には以下のように記載されています。
"A more recent case series of cats treated for ureterolithiasis found that approximately 98% of ureteroliths contain calcium oxalate. Veterinary surgeons are increasingly faced with the challenge of surgical management of upper tract uroliths in cats."
(尿管結石症の治療を受けた猫の最近の症例シリーズでは、尿管結石の約98%にシュウ酸カルシウムが含まれていることが示された。獣医外科医は、猫の上部尿路結石に対する外科的管理という課題に直面することが増えている。)
原因とリスク要因
シュウ酸カルシウム結石は、尿がカルシウムとシュウ酸で過飽和状態になったときに形成されます。酸性尿の環境下でこれら2つの物質が高濃度になると、互いに結合して結晶を形成し、最終的に結石へと成長します。
この代謝異常には複数の要因が関与しています。犬における症例数の増加は、複数の生活習慣や食事の影響に関連していると考えられています。標準的な獣医内科学の文献には以下のように述べられています。
"The reasons for the increase in submissions of CaOx from dogs are likely multifactorial and could include demographic and nutritional changes that occurred during this period. Some factors might include feeding a more acidified diet, changes in mineral content of the diets, increase in canine obesity, and possibly a trend favoring ownership of breeds that are more prone to CaOx urolith formation."
(犬におけるシュウ酸カルシウム[CaOx]結石の検査依頼件数が増加している理由は多因子性であると考えられ、この期間に生じた人口統計学的および栄養学的な変化が含まれる可能性がある。要因としては、より酸性化された食事の給与、食事中のミネラル含有量の変化、犬の肥満の増加、そしておそらくCaOx尿石を形成しやすい犬種の飼育傾向などが挙げられる。)
猫における重要な潜在的リスク要因の一つに、特発性高カルシウム血症(原因不明の血中カルシウム濃度の上昇)があります。同内科学文献には以下のように記されています。
"An idiopathic hypercalcemia is reported to occur in approximately 35% of cats with calcium oxalate uroliths."
(シュウ酸カルシウム尿石を持つ猫の約35%において、特発性高カルシウム血症の発生が報告されている。)
さらに、過去数十年間のデータによると、猫における結石の有病率は劇的に変化しており、シュウ酸カルシウム結石はかつてよりもはるかに一般的になっています。
注意すべき症状
シュウ酸カルシウム結石の症状は、結石が膀胱にあるか腎臓にあるか、また物理的な閉塞を引き起こしているかによって異なります。
主要症状
- 頻尿(Pollakiuria): 通常よりも頻繁に排尿を試みるが、数滴しか出ないことが多い。
- 血尿(Hematuria): 尿に血が混じる。ピンク色、赤色、または紅茶色に見えることがある。
- しぶり(Stranguria): 排尿時に力む。ペットが長時間排尿の姿勢をとり続ける。
- 排尿困難・排尿痛(Dysuria): 痛みを伴う排尿。排尿中に鳴いたり、うめき声を上げたりすることがある。
その他の症状
- 不適切な排尿: トイレ以外の場所での排尿や、粗相をしてしまう。
- 腹部または腰部の痛み: お腹や腰の不快感。特に結石が腎臓や尿管にある場合に顕著。
- 嘔吐および食欲不振: 食欲の低下や嘔吐。これらは腎障害を示す一般的な全身症状。
- 元気消失および体重減少: 全身の衰弱、エネルギーの低下、徐々に進行する体重減少。
- 多尿および多飲: 飲水量の増加と、それに伴う総排尿量の増加。
- 尿道閉塞: 尿をまったく排出できなくなる状態。これは生命を脅かす緊急事態です。
猫の上部尿路に結石が形成された場合、症状は非常に微妙で、見落とされやすい傾向があります。主要な獣医外科学のテキストでは以下のように説明されています。
"Clinical signs of cats with ureteroliths or nephroliths tend to be nonspecific and include anorexia, vomiting, lethargy, and weight loss."
(尿管結石または腎結石を持つ猫の臨床症状は非特異的である傾向があり、食欲不振、嘔吐、嗜眠[元気消失]、体重減少などが含まれる。)

背中を丸めた姿勢や腹部の不快感は、尿路の痛みや結石形成の兆候である可能性があります。
獣医師による診断方法
獣医師はまず、ペットの腹部に細心の注意を払いながら、徹底的な身体検査を行います。しかし、多くの尿路疾患は同様の症状を示すため、結石の存在を確認し、その種類を特定するには診断検査が必要です。
- 腹部単純エックス線検査(レントゲン): シュウ酸カルシウム結石は放射線不透過性が非常に高いため、標準的なレントゲン検査で鮮明な白い影として写ります。これは、膀胱、尿道、腎臓、または尿管内の結石の位置を特定するための最初のステップとしてよく用いられます。
- 腹部超音波検査(エコー): 超音波検査は感度が高く、レントゲンでは見落とされやすい小さな結石を検出するのに役立ちます。また、腎臓の腫れ(水腎症)や尿の貯留を評価することができ、これらは閉塞の指標となります。
- 尿検査: 尿のpH、比重(濃度)、潜血、タンパク質、結晶の有無を評価します。顕微鏡下でシュウ酸カルシウム結晶が検出された場合はリスクが示唆されますが、これだけで結石が確実に存在することの証明にはなりません。
- 尿培養検査: 細菌性尿路感染症の併発を確認するために行われます。主要な外科学文献には、「尿路感染症の有無を判断するために、尿検査と尿培養検査を行うべきである」と記載されています。
- 定量的結石分析【ゴールドスタンダード】: 結石の正確な組成を100%確実に特定する唯一の方法は、結石を摘出して専門の検査機関に送り、定量的分析を行うことです。正確な鉱物組成を知ることは、予防計画を立てる上で極めて重要です。
結石除去のために手術が必要な場合、術前検査として血液検査も実施されます。複雑な症例では、事前に血液型判定や交差適合試験(クロスマッチ)が推奨されることもあります。「手術中または手術後に輸血が必要となった場合に備え、交差適合試験または血液型判定を行っておくべきである」ためです。
治療の選択肢
シュウ酸カルシウム結石は薬物や食事療法で溶解できないため、治療は(結石が痛みや閉塞を引き起こしている場合の)物理的な除去と、それに続く新しい結石の形成を防ぐための長期的な内科的管理に焦点を当てます。
外科的およびインターベンションによる除去
結石が尿の流れを遮断している場合、または激しい痛みを引き起こしている場合は、除去する必要があります。これは、従来の外科手術(膀胱切開や腎臓切開)または、内視鏡を用いて結石を回収したり閉塞をバイパスしたりする低侵襲なインターベンション治療によって行われます。
二次的な内科療法(予防)
結石が除去された後、獣医師はペットの尿化学を変化させるための長期的な内科的治療計画を処方します。これには通常、専用の療法食と特定の薬剤の組み合わせが含まれます。
- クエン酸カリウム(potassium citrate)(尿アルカリ化剤): この薬剤は尿のpHを上昇させ、酸性度を下げる働きをします。また、クエン酸は尿中のカルシウムと結合するため、カルシウムがシュウ酸と結合して新しい結石を形成するのを防ぐのに役立ちます。
- ヒドロクロロチアジド(hydrochlorothiazide)(チアジド系利尿薬): 腎臓でのカルシウム再吸収を促進することで、尿中に排出されるカルシウムの量を減らす効果があります。
- 塩化ナトリウム(sodium chloride)(輸液療法/電解質補給剤): 症例によっては、飲水量を増やして尿を希釈するために、追加の塩分が使用されることがあります。しかし、これには細心の注意が必要です。主要な内科学文献では以下のように警告されています。
"High-sodium diets should be avoided in cats with renal compromise and in those with hypertension."
(腎機能障害や高血圧を患っている猫では、高ナトリウム食は避けるべきである。)
予後
犬や猫のシュウ酸カルシウム尿石症における長期的な予後データは限られており、個々の経過は結石の位置、腎障害の有無、および予防計画がどの程度厳密に守られているかによって大きく異なります。
シュウ酸カルシウム尿石症は非常に再発しやすい疾患です。手術による除去が成功し、優れた家庭内ケアを行っていても、多くのペットが生涯のうちに新しい結石を再形成します。つまり、この疾患の管理は生涯にわたる取り組みとなります。定期的な獣医師による診察、定期的な画像検査(レントゲンや超音波)、頻繁な尿検査を行い、新しい結石がまだ手術なしで管理できるほど小さい段階で発見することが不可欠です。
予防法
ペットの遺伝的素因を変えることはできませんが、結石の再発リスクを減らすために積極的な対策を講じることは可能です。
- 飲水量を最大化する: これが最も重要な予防策です。尿を希釈することでミネラル濃度を低く保ち、結晶が凝集しにくくなります。ドライフードではなくウェットフード(缶詰)を与えたり、食事に水を加えたり、新鮮な水を飲める場所を複数用意したり、ペット用給水器を活用したりしてください。
- 療法食: 獣医師は、尿のpHを中性に維持し、カルシウムとシュウ酸のレベルをコントロールするように調整された療法食を処方することがあります。
- 定期的なモニタリング: 定期的な再診スケジュールを立ててください。結晶や微小な結石を早期に発見することで、重篤な閉塞が起こる前に、獣医師が投薬量を調整したり、軽微な処置を行ったりすることが可能になります。
獣医師に連絡すべきタイミング
排尿頻度の増加、力み、尿への血液の混入など、ペットの排尿習慣に変化が見られた場合は、すぐに獣医師に連絡してください。
ペットが排尿しようと力んでいるにもかかわらず、尿がほとんど、あるいはまったく出ていない場合は、生命を脅かす緊急事態です。 完全な尿路閉塞は、数時間以内に急性腎不全や致死的な電解質異常を引き起こす可能性があります。直ちに救急動物病院を受診してください。
特定の犬種・猫種について
特定の犬種や猫種は、遺伝的にシュウ酸カルシウム結石を発症しやすい傾向があります。以下の犬種・猫種を飼育している場合は、排尿習慣のモニタリングに特に注意を払う必要があります。
これらの犬種・猫種では、毎年の定期健康診断の際に尿検査による積極的なスクリーニングを行うことが強く推奨されます。
参考文献
- Current Techniques in Small Animal Surgery, 5th Edition, pages 469, 470.
- Internal Medicine, 5th Edition, pages 723, 726.
ハイライトとメモ
症状・兆候
リスクが高い品種
診断方法
- Quantitative mineral analysis標準検査
- 腹部超音波検査
- Survey abdominal radiographs
- 尿検査
- 尿培養
治療アプローチ
治療はペットの状態に応じて獣医師が処方する必要があります。特定の薬物用量は意図的にここに記載していません。
よくある質問
シュウ酸カルシウム尿石症とは
シュウ酸カルシウム尿石症は、犬や猫の尿路に痛み伴う鉱物結石が形成される一般的な代謝性疾患です。他の結石とは異なり、食事療法や内科治療で溶解させることができないため、外科的除去が必要となることが多く、生涯にわたる再発予防管理が不可欠です。
シュウ酸カルシウム尿石症の症状は
血尿、排尿時の痛みや排尿困難、頻尿、おしっこが出にくい、食欲不振(ご飯を食べない)、元気消失、腰痛 / 腰を痛がる / 抱っこを嫌がる / 背中を丸めて歩く / 腰を触ると怒る、多飲
シュウ酸カルシウム尿石症はどのように診断されますか
Quantitative mineral analysis、腹部超音波検査、Survey abdominal radiographs、尿検査、尿培養
シュウ酸カルシウム尿石症はどのように治療されますか
治療はペットの状態に応じて獣医師が処方する必要があります。特定の薬物用量は意図的にここに記載していません。
出典
- Current Techniques in Small Animal Surgery, 5th Edition (VetBooks.ir) · ページ 469
- Internal Medicine 5th · ページ 723
- Current Techniques in Small Animal Surgery, 5th Edition (VetBooks.ir) · ページ 470
- Internal Medicine 5th · ページ 726
- Internal Medicine 5th · ページ 723
この記事は一般的な健康教育を目的としており、専門的な獣医学的アドバイスの代わりにはなりません。ペットが調子悪い場合は、獣医師にご相談ください。